本文書は、サムエル氏の許可を得て日本語に翻訳したものです。翻訳は荒訳で、時間をかけずに意訳した部分もあるので、誤訳の部分も多いと思います。したがって、この日本語版の内容についてサムエル氏に質問しないで欲しいと思います。特に、日本語でのメールは、絶対に送らないで下さい。疑義のある場合は、原典を参照して下さい。また、本文書の利用については、あくまでも利用者の自己責任のもとに行って下さい。(2000年9月1日星記す) |
ハエトリソウの周期的な成育のしかたを学ぶと、まるで栽培の名人に相談しているように、休眠期間、捕虫葉の大きさ、植物体の色についての理屈に不正確な点があることに気がつきます。そこで、この成育サイクルに関する誤解のいくつかを解消するために、この小論を書こうと思いました。
あるとき、私が子供の時に学校で、食虫植物についての大きな雑誌サイズの本を見たのが最初でした。その本には、沢山の種類の食虫植物が描かれていましたが、私が最も注目したのは、ハエトリソウただひとつでした。その植物が何を食べ、どのように捕虫するのか詳しく知りませんでしたが、その形は、これまで見たものの中でこんなに好みに合ったものが無かったくらい、私に良い意味での好奇心と驚きの気持ちを与えました。
そのあと、少し大きくなってから、スーパーマーケットで3ドルで売られているハエトリソウを見て、びっくり仰天しました。私の住んでいる所で、この植物が売られていたということは信じがたいことでした。さらに、このような驚くべき植物をたった3ドルで売ることができることも信じがたいことでした。
そういうわけで、私はそれを買いました。それはやがて枯れてしまいましたが、次に手に入れたときには、育てることができるように、私はハエトリソウの成育特性を知ろうと決意をしました。何冊かの本を調べました。本のいくつかは、施肥は危険であるとはっきり述べていました。つまり、肥料をやっても大きくならないということです。手短に言うと、私はそれで7株以上のハエトリソウを枯らしました。そのなかの一株は、ビルダーズ・スクエアというお店で買った、捕虫葉が1.5インチ(3.7cm)もある巨大なやつで、本当に珍しいものでした。
それが枯れたときには、特に珍しいものだったときには、すっかりふさぎこんでしまいました。そのあとには、さらに強い決意で、ハエトリソウの育て方を知るために時間を費やしました(ハエトリソウの栽培方法については本文書の末尾にあります)。本当にそれをどのように扱うのかを知りたかったので、沢山の書物を読み、多くの栽培名人に手紙を書き、この植物について予想以上に沢山のことを学べました。
この植物への深い理解は、ハエトリソウの育ち方についての多くのうわさや不正確な点をはっきりと教えてくれました。
休眠
私がかつて読んだ理論のどれもが、これまで、ハエトリソウの休眠期間は、光と温度条件によって引き起こされると述べています。にもかかわらず、私の育てている2株のハエトリソウは、この冬の日光と温度(10.0〜15.5℃)で完全には休眠しませんでした。これらの植物は、冬の期間を通じて急速に成長し大きくなりました。ところが、4月になると、これら2株は休眠に入ってしまいました。
私の買ったこれらの植物は、多分、冬季に販売するために、夏遅くまでむりやり休眠させる場所にあったのではないでしょうか。4.4℃程度の低温をハエトリソウに与えると休眠することで、休眠期間をコントロールできることが知られています。多分、これらの2株は、冬季の光と温度を受けて、それがもうひとつの休眠期間の開始の合図になってしまったのかもしれません。しかし植物の体内リズムという理由からは、その開始の合図を受けても、直前の休眠からさめて、再び休眠に入るために数ヶ月必要です。
また、もし、植物の体内リズムがそういった栽培で乱されても、植物は気温の変化などを認めることはできるので、成育サイクルが良い形に戻るために約1年を要するでしょう。
ハエトリソウの成育サイクルがおおよそこのような方法で振舞うとしても、熱、寒さ、光によって、ハエトリソウの成育サイクルをコントロールする可能性は大変少ないです。
また、蒸散もハエトリソウの成育サイクルを混乱させます。
捕虫器の大きさ
理論は述べています、「ハエトリソウの捕虫器は、夏季に最大に育つ」と。にもかかわらず、私の育てている、非常に短い休眠期間に入っていた一株は、今成育していて、ハート型の短い春葉に、最大の捕虫器をつけています。この植物の遺伝的な違いによる影響がとても大きいというのが、私の持論です。捕虫器が最大になる時期については、生育サイクルを真の要因にすることはできません。
ハエトリソウの休眠期に近い秋季には、全てのハエトリソウで新しい捕虫器を展開していましたが、それらの大きさは成育サイクルのほかの段階より小さいことが認められます。しかし、この成育サイクルの段階でも、何株かは特にこの段階だけ混乱して、大きな捕虫器をつける傾向にあります。
お店にある大抵のハエトリソウは、夏葉を展開した状態で販売されているので、私達が買うときには、ちょうど秋葉を出そうとしているところです。そしてそれは、買った植物が、まるで、死にかかっていくか弱っていくように思え、多くの人々のその植物に対する興味を失わせ、その結果、世話をする気が無くなって、彼らを枯死に導いてしまいます。
光や湿度による影響だけでなく、根の成長というものもまた影響を与えるように思います。植物のひとつの要素である根が良く育たなかったとしたら、葉は、根からの栄養をもらうことができず、小さな捕虫器を作るようになるでしょう。
根に影響を与える数多くの要素があります。虫などに根を食べられて障害を受けることや、十分な酸素や有機質の栄養分が無いことなどがあります。一例として、古くなったミズゴケやピートモスで鉢に植えられている植物は、たくさんの有機質の栄養分があるにもかかわらず、時間の経過に伴って、植物は酸素不足に苦しめられるかもしれません。ミズゴケやピートモスが崩れると、培地がつぶれてしまい、酸素を蓄えている培地の中の空隙を押しつぶして、培地のその部分の根の成育をすこし弱らせる原因になります。
新しく生えてきた葉のカビによる小さな病班や、成育中の小さな捕虫葉をえさとして小さな昆虫が食害することも、捕虫器の大きさに影響を与えます。やはり、完全に成育するようにその障害から保護します。
私の観察によると、ハエトリソウの球茎(株もとの肥大した部分)の側も、ある場合には肥厚し、そしてそれが多数の捕虫器が生育するもう一方の側に、大きな捕虫器を育てるためのより多くの栄養分を与えると信ずべき理由があります。植物がより多くの葉を地上部に育てるようになるのは、植物の球茎が成育サイクルを通じて、地下からより多くの栄養を移動させているからです。植物が土の中により深く穴をあけることのできる最も早くうまくいく方法は、植物が育つより深いところでひとつの成長点を作ることです。より深いところだけのひとつの側で成長することによって、ハエトリソウは、まるでドリルのように土の中に自分を押し込みます。地下の球茎の成長が完了すると同時に、その成長の動きが反対の方向になって、多数の葉をつけるようになります。
私は、このプロセスについてそれほど長く十分に研究していませんが、夏の終わりになると、冬の低温と乾燥から自分を守るためにそのようなことをしていると想像できましょう。
このような理由から、ハエトリソウは、いつもロゼット植物として成育するわけではありません。
しかし、あるときには、真のロゼット植物になって、ハエトリソウは自分自身を土に置くことができます。このような成育パターンは、すばらしい形のロゼットが形成し終わって、でたらめな方法で葉自身が成長することによって、開始されるのかもしれません。ロゼットの形は下からの新しい葉が成長して外に展開するのを妨げるようなので、それによって、球茎の中央部分から新しい葉を出す成長が妨げられることになります。
この植物のロゼットの成長パターンは、植物を長期間一定に保つかもしれませんが、球茎のまわりの土壌や生きている苔が、そのような方向への成長を妨げれば、ロゼットの成育は破れてしまいます。
このような場合、成育スペースの欠乏もまた、植物の成長を遅くするかもしれず、圧迫された球茎に養分の蓄積ができないので、それは葉に送られ、栄養分によってより大きな捕虫器を形成させます。しかし、これと同じ要因は、もし、植物が肥培されていると、球茎が分割し、多数の葉が展開するようになります。
さらに、球茎への圧迫は、時として、ロゼットの成長を妨げるので、植物の激しい株分れも引き起こすかもしれません。
私が植えた植物のちょうど半分の株が、このような条件で株分れしました。球茎の周りを用土できつく植えるのと同様に、周りで苔が成長していくという窮屈な条件で育てたハエトリソウの品種ローヤルレッドは、株分れしたり、成育に問題を引き起こさず、約1年の間ロゼット植物のまま成育しました。
個人的には、ミズゴケを混合した用土でゆるく植えたほうが、むしろ良く育つようです。
発色
もうひとつの誤解は、強い光を当てると植物は常に赤くなるということです。成育サイクルの中のいくつかの段階だけしか成り立ちません。多くの植物では、強光下でさえ、いくつかの段階で赤みをほとんど失うことがあります。私が強光下で育てているレッドドラゴンは、休眠から覚める時期には、赤というより緑色に育ちます。赤い色が抜けるのは、多くの場合、春季です。しかし、いくつかのハエトリソウは、この期間でも、捕虫器はとても赤いかもしれません。
赤の発色は、土壌の水素イオン(pH)によっても影響されます。装飾用の石や潅水の水のために土壌が酸性を保てない場合、赤く色づいた捕虫器は、きれいな赤色が抜けていってしまうかもしれません。
植物が沢山の昆虫を捕らえて、栄養過多になった場合も、新しく成長した捕虫器の赤色が抜けてしまいます。栄養が欠乏して植物の成長が遅くなったときには、涼しい気候で、十分に日に当てると、赤い捕虫器を展開し始めます。
餌を与えないと、以下の要因が組み合わされて、植物を赤くしていくと信じています。第一の要因は、成長を遅くして、沢山の葉を展開させず、少ない捕虫器が長期間保つようになることです。こうすることで、我々が日に焼けて黒くなるように、日光から捕虫器や葉を守るために、色素を作ります。
第二の要因は、前述の日焼けがまた、さらなる適応のための進化のステップとして働くと信じています。捕虫器のさらに目を引く色を獲得することが、より多くの昆虫を引きつけることを意味します。
土壌からのある程度の栄養分の吸収は、成育が遅くても葉を強健にし、虫を与えたときよりもより頑丈な捕虫器になる傾向がしばしばあります。
葉形(ここでは捕虫器以外の部分の葉を指している)
多くの植物の葉と異なり、ハエトリソウの葉は、成育サイクルの段階ごとに異なって見えます。夏の間、葉が細長くなり、春には、葉が広く、ハート型をして短くなり、休眠前の秋の大部分は、夏の半分の長さで、先端はややハート型を帯びます。
けれども、特定の品種では、遺伝的な理由から、これらの葉形の変化サイクルとは大変異なった部分があります。春に、いくつかの品種は、かなり早く育つ間、秋の葉に良く似た葉を出すようです。私の育てているいくつかのハエトリソウは、秋の葉を出していますが、奇妙なことに、休眠のサインを出しているわけではありません(これらの植物は、成育サイクルの別の段階で休眠に入ったと言うことです)。いくつかのものは、夏の長い葉すら出さずに、細い葉と大きな捕虫器の短いロゼットの捕虫葉を出します。
しかし、春の葉は、私のこれまで見た全てのハエトリソウでは、最も幅広い葉を出します。個体や品種にかかわらず、ハエトリソウの休眠期間は、成長が最も遅い段階として認めることができます。同様に、健全な捕虫器でも閉じなかったり、閉じるスピートも確実に遅くなったりします。
野生では、太陽が真上に来ない時期に広いハート型の葉を出すように見えます。葉が太陽エネルギを捕捉するちょうど太陽電池のような働きであることから、このような形は少ない光から沢山のエネルギを得ることができます。夏の間は、日差しが強く、周囲の草や昆虫から立ち上がるために、長く細い葉を出します。けれども、野生においても、ハエトリソウの多くの亜種が見出されています。多分、その場所の環境変化の違いに起因するのでしょう。
肥料
ハエトリソウに施肥は有害ですが、意外なことに、平均的なラン用の肥料を、規定濃度で施肥することもできるのです。しかし、これが大変重要な点ですが、施肥では、水に肥料を溶かした液肥をq-tip(綿棒)に漬けるときに、綿棒から液が滴り落ちないように、大変注意深く行わなくてはなりません。綿棒は濡れていなくてはだめですが、使うときに下に滴が落ちるほど濡れていてはいけません。
かつて行った方法では、綿棒を使って葉(捕虫器ではない)の表面に塗ること(3枚の葉に十分に塗りました)、むしろ葉の裏のほうが良いかもしれませんが、からはじめると良いと思います。正確に言うと、このような方法で施肥を行って1ヵ月たっても根に害を及ぼしませんでした。
この方法は、弱ったハエトリソウを元に戻す、特に、元気な捕虫器が無くなってしまったものの、ためにもとても良いアイデアであります。肥料が球茎や根に垂れないようにしていれば、安全です。これが、綿棒を最低限に濡らすという理由です。
鉱物質(ミネラル)
いくつかの定説は、鉱物質がハエトリソウに悪いと誤解させる情報を与えています。鉱物質のある土壌に育っている野生のハエトリソウもあるので、これは常に正しいとはいえません。ハエトリソウは、「塩」が最も好きでないかもしれないということを除いて、このような鉱物質を好きではないのかもしれません。塩気のある水で、そこに魚が住んでいる所で、ハエトリソウが生えている場所を、私は時々見たことがあり、そうであれば、そのような場所が見つかる説明ができません。
このようなわけで、自然界の塩は、ハエトリソウの成長に悪いかもしれないし、悪くないかもしれません。
しかし、ハエトリソウが好む水は、汚染が無くきれいでなければなりません。鉱物質の砂も同様に汚染が無くきれいであり、その砂がろ過して、水を大変きれいにします。
ハエトリソウが成育している鉱物質の土壌は、窒素をほとんど含んでいません。ハエトリソウの根は大変少ない窒素の環境に馴染んでいます、このことが、肥料が根系に危険であるという理由です。
培地
ハエトリソウを栽培する人の多くは、培地として、珪砂のような荒砂を勧めます。培地のpHを調べると、珪砂などの園芸用の砂について最近気がついたことなのですが、それらは酸性というよりは強いアルカリ性です。そして、ピートモスと混合したときでも、培地は全くのアルカリ性でした。
このような培地では、次のような症状が現れます。緑色が濃くなり、開花せず、弱く小さくしか成育せず、捕虫器は捕虫で枯死しやすく、成育は緩慢で、捕虫しすぎると成育を停止して根が枯れて枯死します。
野生でハエトリソウが育つ土壌であるシルバーサンドでさえ、自然状態では弱アルカリ性です。ハエトリソウが育つシルバーサンドが酸性になる理由は、砂それ自身ではなく、ピートモスなどを通った強酸性の水が、pHの環境に優勢に働いているからです。
鉢の中では、砂のような培地だけでハエトリソウが健全に育つ程度の酸性レベルに保つことは難しいので、このような環境にすることはできません。ピートモスを単用すべきで、そうすれば、株を健康で発色良くすることができます。良質のピートモスと少量の樹皮(バーク)は、根が成長するのに十分な空気を用意します。
もし、フロリダに住んでいれば、裏庭からシルバーサンドを調達し、よく洗って、ピートモスの混合用に使えます。この砂だけが、培地のpHにも影響を与えないことがわかり、ハエトリソウが自然に育つための大切な方法であります。
パーライト、これさえも少しアルカリ性ですが、ピートモスと半々に混ぜることができ、ピートモスが勝って、培地のpHは酸性にとどまります。
驚くべき進化
植物が成育する場所と同様に、野生でこの植物の遺伝的な変異がいくつあるかを知ることは、自然でどのくらい早く突然変異するかの可能性を私に考えさせてくれます。もし、わかれば、他の植物ではできなかった進化が、なぜこの植物で起こったのかという理由がわかるかもしれません。
動物や植物の突然変異が速く起こる傾向があるとき、小さな集団の中の遺伝子は多種多様になります。そして、その結果、自然淘汰による適応が急速に起こります。突然変異がひとつの集団の中で起こることは、自然淘汰による選抜を行うことができて、より大きな進化のステップを進むことができるという点で、意味があります。
このような因果関係の働きは、環境に適応しなかったり、新しい世代と競争できなかった突然変異の個体全ての急速な滅亡を作り出します。
さらに、速い進化のパターンに加えて、この速い適応は、化石と同様に生きている先祖型をほとんど残さない傾向もあり、そのことは、ハエトリソウの持つ「失われた環」の大きな空白を説明できましょう。
これまで、ハエトリソウは、私たちが、今日ドロセラ(モウセンゴケ)として知っている、ひとつの食虫植物から進化したと信じられています。しかし、一般的には、木の上に住む小型のサルは人間から縁遠い以上に、モウセンゴケはハエトリソウからさらに縁遠いといわれています。
モウセンゴケが進化してきて、今日私達が見るハエトリソウは、進化の最後の姿ではないのでしょうか、ある環境に適応したこと以外に、進化がもっと複雑になることはないのでしょうか。今日存在するハエトリソウは、進化した最終的な種なのでしょうか、あるいは進化の歴史の中の真中あたりを巡っているのでしょうか、あるいは、まさか、最後の生き残りなのでしょうか。
この植物は、私たちに、不完全な適応と完全な適応は何か、という考えを与えてくれます。進化と生存の助けになるのは、遺伝的な変異のしやすさでした。もし、変異が少なければ、その植物は、ほとんと完全に育ち、世代間でほとんど同じ性質を保ちます。そして、成育場所の環境が複雑に移り変わりやすいところでは生き残る可能性はないでしょう。
完全に良く育つということは、ある特定の環境にその株が置かれているという相対的なものです。完全に適応しているようには見えず、別の株のほうがより完全に近く適応しているというのも、ある特定の環境にそれが置かれているという相対的なものです。そして、ある環境ではほとんど完全な適応でも、もうひとつ別の環境では障害があったり不完全な適応であるかもしれないのです。
まとめ
目や脳や足もないひとつの植物が真の肉食獣になるとは誰が考えるでしょうか。この植物は、因果関係のなかで、創造という万物の神の一部分であり、強靭で、知的で、機敏であるものだけが死の試練を通過することができ、それによって、たくさんのちっちゃな生き物の未来の進化に影響し、新しい種の誕生の扉を開きます。
私は、いったいいくつくらいの昆虫が、この植物の試練を通りぬけたのか、ときどき思いを巡らせます。
何ヵ月もこの植物を眺め、成育サイクルについて専門家に質問することによって、かつて本から得られた以上に、より良い理解を得ることができました。ハエトリソウを研究している他の科学者は、この種のより完全な理解のために、成長を支配する全ての要因について注意を払うべきです。
答えを見つけようとしているいくつかの科学的な疑問があります。以下の疑問に対する答えは、このような研究結果の一部です。
なぜ、この植物はもっと大きな捕虫器をつけるように進化しなかったのか?
最も大きな捕虫器を持つなかのひとつのハエトリソウが捕虫器をつけた時に、研究したことがあります。それは、レッドパープルと呼ばれる品種で、捕虫器が大きすぎるので、捕らえた昆虫を消化し終わった後、ゆがみなく普通の形に捕虫器を戻すことが、平均的な大きさの捕虫器を持つものよりもとても困難でした。
捕虫器は、再び捕虫できるようになるまでにも、さらに大きく成長する傾向があるので、それが閉じる機構を弱くしたりゆがめたりします。このようなことは、捕虫器を何回も使用することを妨げて、平均的な捕虫器より捕虫可能な寿命を縮めてしまいます。
このような遺伝的特性を持つ植物が野生の中で生き残ることができたとしても、平均的な大きさの捕虫器を持つ他の植物と同じようには勝利しないでしょう。このことも、ハエトリソウが大きな捕虫器をつける進化をしない理由であるといえましょう。
大きな捕虫器を持つことのもうひとつの短所は、大きな捕虫器が捕虫すると、中の犠牲者を捕まえておく力が弱くなってしまうことです。捕虫器が再び開くのには、その外側よりも内側をより成長させるので、捕虫器は厚く硬くなり、その結果、柔軟性が失われて、速く閉じる能力も失われ、厚くなることは、捕虫器の内側と外側の細胞層を伸ばして捕虫器を変形させにくくなります。
ハエトリソウが突然変異を通じて、これらの問題点を解決する方法を見つけたり、サイズを大きくすることができず、むしろ、小さいままで起こる出来事のほうが全体として有利であったことは、いうまでもありません。
そして最後の欠点は、大きな捕虫器が閉じると、内部に多くの空間を残してしまうだろうということです。その後に起こる締め付け運動によって死んでしまう前に、多くの昆虫は、捕虫器に穴を開けて逃げ出すための時間を持てるようになります。
なぜ、それぞれの葉にひとつの捕虫器しか付けないの?
多分、ひとつの捕虫葉にひとつの捕虫器で捕虫能力が十分であるからだと思います。
さらに、多分、そのような突然変異が起こって成功をおさめるだけの十分な時間がなかったからだと思います。それは、捕虫器の突然変異だけでなく、捕虫器を保持している捕虫葉の葉柄部分の分枝の突然変異も必要だったでしょう。このような変異の起こる確率は大変低く、この理由によって、この方向にまだ進化できていないのだと、私は信じています。
さもなければ、このような遺伝的な突然変異は思ったより難しいのかもしれません。一枚の捕虫葉に多くの捕虫器をつけることは、植物が生き残るためのコスト効果がない可能性もあります。
ハエトリソウは、一枚の捕虫葉にひとつの捕虫器をつけるので、このような構造を作り出すために必要な養分に余裕ができるのでしょう。
しかし、もし、一枚の捕虫葉にひとつより多い捕虫器をつけるようになったら、少ない捕虫葉を動物が踏みつけたり、虫がやってきて食べたりすると、植物はより多くのエネルギを失い、その生命力に影響を及ぼすでしょう。
この植物は、貧窒素の土壌に成育して、外部の供給源から養分を得ることが最良なので、捕虫葉をつくるエネルギを節約することが信ずべき要因でありましょう。
さらに、それぞれの捕虫葉にひとつより多い捕虫器をつけると、何回も捕虫したなどの理由でひとつの捕虫器が枯れてしまうと、その植物は、植物体全体の枯死を防いだり、カビの進入から守るために、その捕虫葉全体を枯らすように命じなければなりません。
その結果、複数の捕虫器を付けると、成長エネルギを浪費し、全体に余裕がなくなってしまうかもしれません。
つまり、複数の捕虫器を付けた植物は、その後うまく生き残れないかもしれません。
進化が起こり、それに直面すると、時に私たちは、なぜ、そのような姿になり、そのような行動をし、そのように成育するのかを尋ねます。しかし、自然淘汰の中では、確実な事実はひとつです。それは、百万年のあいだ存在していることが、その姿、行動、成育の理由なのだと、それが生存している環境でそのように存在するための突然変異、それらが、最も成功したために、選択されたことなのです。
欠陥を持つことを気づく存在は、まさに完全になろうとしているといえましょう。つまり、そのような欠陥を、その環境の中で生き抜くために必要になる完全な要因に、まさに変えようと目指すからです。
水 雨水(家の屋根から落ちてくるものは避ける)、逆浸透法による純水、蒸留水をいつもやってください。瓶詰めの蒸留水や軟水化フィルタを通した水など、塩類を含む水は使えません。
水が酸性であるように留意してください。水のpHが5.5〜6.0ぐらいで成長することを好みます。pHが、それ以下や、それ以上でも、あまり良く育たないでしょう。アルカリ性の水を与えると捕虫葉の緑が濃くなり、酸性過ぎる水を与えると、赤くなったり成長が止まってしまいます。
ほとんどの人は、ハエトリソウが我慢できる程度の弱アルカリ性のきれいな水であれば、水の酸度について注意を払いません。
注意を払わなくても、ピートモス単用で育てていれば、水は調整しなくても酸性に変わります。
培地の配合 ピートモスだけ(良いピートモスは、排水を良くする樹皮も含んでいます)か、塩類を含まない中性の砂があれば、ピートモスと半々に混ぜてください(砂だけは良く育ちません、野生の成育環境をまねするには、気に入った土と混ぜることです)。
もっと排水を良くしたければ、砂の混合割合までパーライトを使ってみてください。
成育期間(春から夏)中は、常に培地は湿らせておいてください。鉢(植物の大きさにより深さ4〜6インチ(10.2cm〜15.3cm))の下に2インチ(5.1cm)の深さの受け皿を置き、1インチ(2.5cm)の深さに皿の水位を保ってください。皿の水位が少し下がってから、再び水をやってください。
休眠 休眠期間(本文で説明しました)は、皿を鉢から取り去り、簡単に水を吸収する毒性の無い縄(12インチ(30cm)の長さで、8本束ねて1インチ(2.5cm)の太さ以上のもの)を濡らし、一端を鉢穴に通して、もう一端の長さの半分を鉢の近くに置くことのできる水槽に浸します。鉢の培地は、縄から水を得て湿り気を保ちますが、そのレベルはハエトリソウが休眠に入るのを助ける程度です。1週間ほど鉢を毎日点検して、うまく機能していることを確かめます。鉢の穴が縄にとってきつ過ぎれば、水は鉢の中の土に届きません。その場合は、中くらいの大きさのハサミの刃を鉢の穴に入れて、それをこじって穴を大きくしてください。根を痛めないように注意深く行ってください。
栽培場所の寒い時期の気温が10〜4℃くらいであれば、冬中外に置いておいて、霜よけだけしてください。また、もっと几帳面にやる方法についてはこれから説明します。冬の気温が、先ほど述べた気温より高かったり、低かったりしたら、鉢から植物を取り出し、乾燥した葉だけを取り去り、適当な殺菌剤を振りかけます(シナモンは良い天然の殺菌剤です。はけを使ってぱらぱらと上から少量振りかけます)。そして、湿っているが濡れていないミズゴケで包み、プラスチック製の移植袋に入れて、口を閉じ、家庭用の冷蔵庫(製氷室からは離して)に入れるか、部屋の寒い場所に置きます。それから、何週間かは、カビが生えていないか点検します。また、冷蔵庫に入れているのであれば、変わったタマネギのような食べ物でないことを、ほかの人に知らせておいてください。
個人的には、どのような種類の殺菌剤も使ったことがありません。健康なハエトリソウは、滅多にカビに侵されないことを知っています。しかし、濡れたミズゴケはカビの原因に良くなります。これが、湿ったミズゴケを使う理由です。
あなたのハエトリソウを一番健康に育てようと思ったら、休眠期間の間、鉢に植えたままにしておくのが良いです。鉢から取り出すことで、根がいじられて傷つくこともありません。鉢に入ったままで、チャックつきのプラスチックの袋に密封して、冷蔵庫で保存する方法は、鉢の培地の湿り具合にミズゴケ同様の用心が必要です。
このようなことを行ったほうが良い理由は、特に暑い気候の地方では、植え替えがうまくいかないからです。しかし、プラスチックの袋の中での貯蔵は、休眠から覚めて鉢に植え付けられるときまで植物体が消耗します。根の消耗する期間が長くなり、このことは、株の成長する大きさにも影響を与えてしまいます。
太陽 天気が良ければ、4〜6時間、よく日に当ててください。良い発色を得るには、朝から昼過ぎまでの日光に当てるのが良いですが、暑い気候の地域では、太陽が真上に来る時に暑くならないように遮光し、涼しい気候の地域では、朝から午後遅くまで十分に太陽光を与えてください。ついでに、昆虫の少ない地域では、何ヵ月もの間捕虫することもなく、ハエトリソウは幸福に育つことができます。食虫した後開いた捕虫葉は、ゆがんで色も青くなってしまうので、昆虫がいなければ、捕虫器は開き、赤く色づいて、見栄えも良くなります。
さらに、捕虫器をできるだけ赤くしたいなら、ハエトリソウが飢えるような工夫をすることです。健康で強健に育てたければ、餌を与えるか施肥(肥料の部分を読んでください)します。飢えは、ハエトリソウに害を与えません。ご存知の通り、一般に、この植物は昆虫を食べなくても生活することができます(ふさわしい生育条件の中で)。ハエトリソウが食虫する利点は、より早く成長して、大きくなり、より沢山の子孫を残せることです。しかし、それはまた、満腹になって植物体から赤みを失わせ、ある場合には、捕虫器が小さくしか育たなくなります。
屋外で育てると、ハエトリソウが捕虫せず、ゆっくり成育させ、赤みを増すようにすることは大変困難です。もしそうであれば、私のように、蛍光灯の強い光を当ててテラリウムで育てるほうが良いです。光を沢山当てても、熱がこもらないようにしないと、枯れてしまいます。テラリウムの栽培に不慣れならば、いろいろ悪いことにならないように、経験者に尋ねてください。
新しい株を手に入れた時には、それがどのような栽培条件だったかわからないので、1ヵ月以上かけて、徐々に太陽の光に当てます。捕虫器が赤ければ、良く太陽にあたっていたのかもしれません。その時には、最初に一日3時間朝の日光に当てるようにし、そして、葉焼けしなければ、30分ずつ当てる時間を増やしていきます。株全体が緑色であれば、2時間日光に当てることからはじめます。毎日点検して、2〜3日ごとに、完全なれるまで、さらに太陽にあたるように移動していきます(葉が焼けないようしにして)。
最重要点 水やりを忘れてはいけません。乾かすと根は急速に死に、病気などに対する抵抗力も弱くなります。
そして、最後に、肥料を与えるのであれば、できるだけ穏便な方法でやってください。一枚か二枚の葉に少し与えることが、想像以上に多くの窒素を株に与えることになります(肥料の説を参照してください)。ハエトリソウが捕虫していた場合には、過剰な窒素が害を与えますので、施肥しないで下さい。
ハエトリソウのことについてさらに発見したければ、J.ピエトロパオロとP.ピエトロパオロ著の「世界の食虫植物」("Carnivorous Plants of the World", by James and Patricia Pietropaolo)を近所の図書館で調べてみてください。
ハエトリソウの品種に興味がある人のために、私の好みの数品種についてここに書きます。
レッドパープル (正式には、アメリカのアトランタボタニカル起源の「ビックマウス」として知られている)
1.5インチ(3.7cm)にもなる捕虫器をもつ大変大柄の植物体です。
ローヤルレッド (オーストラリアから)かなり大きな植物体、そしてこれもまた、これまで出会ったなかで、最もすばらしい品種である。
標準的な緑の株 (ホームセンターで売っていた)多くのものは、捕虫器を閉じるのが最も早い
レッドドラゴン(赤い竜) (アトランタから)夏の期間大変赤くなる。大きな捕虫器で閉じるのも早い。
ディングレイジャイアント (「グッダイ・メイト」オーストラリア)大きく育つ。株の直径はディナー皿ぐらいになる。しかし、ビルダーズスクエアのホームセンターでかつて購入した緑色の大きな株は、これよりも少し大きかった。
(いくつかのハエトリソウが開花中に障害を受けるような
乾燥した暑い気候の中でも、この株はこのように強健です)
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