局所肥大症の植物


オーロラ(Sedum rubrotinctum cv.'Aurora')
オベサ(Euphorbia obesa)
ドルステニア・フォエティダ(Dorstenia foetida)
 多肉植物というのは、一般に、サボテン科の植物を除いて、押し葉にすることができない植物の集合を指します。つまり、乾燥に耐えるため植物体の一部を肥大化・肉厚化させて貯蔵器官にしています。葉を肥大させたものは葉多肉植物(Leaf Succulents)と呼ばれます。左上の写真はベンケイソウ科のオーロラ(Sedum rubrotinctum cv.'Aurora')と呼ばれるものですが、葉が丸々と肥大して多肉になっています。光合成する主要器官の葉が貯蔵器官を兼ねている例です。コノフィツムなどのメセンの仲間も、2枚の葉が肥大した多肉植物です。
 また、葉が無いか、痕跡程度か、すぐに落ちてしまうかして、茎が肥大した茎多肉植物(Stem Succulents)というのもあります。その一例として、上中の写真は、トウダイグサ科のオベサ(Euphorbia obesa)という植物です。まるで野球のボールのようです。葉がなくなり、茎だけが球状に多肉化しています。上に見えるのは花です。全体的に多肉化している、これらの比較的良く見られる多肉植物と一線を画すのが、これから紹介する植物です。
アデニウム・オベスム(Adenium obesum)
  ごく普通の多肉化していない葉をつけたり、普通の枝を伸ばしているのに、ある部分がとてつもなく肥大している植物の一群があります。このアンバランスな取り合わせは、その植物をとても不思議な感じにします。肥大する部分によって、葉を除いた茎が肥大しているものをパキコール・サッカレンツ(Pachycaul Succulents、肥厚した茎の多肉植物)と呼びます。上右の写真の植物、ドルステニア・フォエティダ(Dorstenia foetida)と呼ばれるクワ科の植物です。これは、多肉でない葉が付き、奇妙な形の花も咲かせています。しかし、茎は貯蔵器官と兼ねていてとても肥大しています。右の写真は、アデニウム・オベスム(Adenium obesum)と呼ばれるキョウチクトウ科の植物です。下部の茎の部分が肥大しています。しかし、上部には細い枝が出て、さらに薄い葉を付けています。貯蔵器官を除いて枝と葉を見る限りでは、多肉植物という感じはしません。この植物は、左下の写真のような大変美しい花を咲かせるので、別名「砂漠のバラ」とも呼ばれています。
 この特徴がさらに進むと、肥大特殊化した貯蔵器官、例えば、軸部(caudex)、球茎(corm)、根茎(rhizome)、鱗茎(bulb)、塊茎(tuber)、肥大根(tap-rooted)のあるものも含めて、総称して、コーディシフォーム(Caudiciform)と呼ぶようです。壷型植物とか俗にイモものなど呼ばれる一群の植物は、一般に成長が遅く、盆栽のような風格があり、愛好家には珍重されています。このページでは、これらの植物の不思議な姿を紹介したいと思います。
アデニウム・オベスム(Adenium obesum)
パキポディウム・ロスラーツム(Pachypodium rosulatum)
万物想(Tylecodon reticulatus)
 上中の写真の植物は、キョウチクトウ科のパキポディウム・ロスラーツム(Pachypodium rosulatum)です。アデニウムのように茎の元の部分が特に肥大していて、さらに、とげまであります。マダガスカル原産で、黄色い花を咲かせます。休眠期には落葉してしまいます。
 上右は、ベンケイソウ科の万物想(Tylecodon reticulatus)です。これは、茎だけでなく、葉も多肉です。小さな鐘状の花を咲かせますが、咲き終わって枯れても茎に付いたままになり、このような奇観を呈します。日本では、冬の期間に葉を出して成育し、夏は落葉して休眠してしまいます。
 下の左2枚の写真は、亀甲竜(Dioscorea elephantipes)というアフリカ南部原産のヤマノイモ科の植物です。塊根の部分が肥大し、亀の甲羅の模様のように割れてコルク化し、面白い形に成長します。冬の期間は、ハート型をした薄い葉をつけたツルを伸ばすことから、ヤマノイモに近い仲間だということが何となくわかります。
亀甲竜(Dioscorea elephantipes)
亀甲竜(Dioscorea elephantipes)
ホルビー(Ipomoea holubii (I. bolusiana))
 右上は、サツマイモ科のホルビー(Ipomoea holubii (I. bolusiana))です。ボツワナ、ナミビアに自生しているそうで、自然の状態では、肥大部は土中にあるそうです。とても成育が遅く、もう4年も栽培しているのにほとんど肥大部が大きくなりません。暖かい時期に、30cm位のつるを数本伸ばして、ピンク色の美しい花を咲かせます。冬は落葉してしまいます。
右横は、ユリ科の蒼角殿(Bowiea volubilis)(ソウカクデン)です。肥大した鱗茎を持っていて、そこからアスパラガスの仲間に似ているつるを出します。アフリカ原産です。
 下左は、うつぼ錦(Anacampseros alstonii (Avonia alstonii))と呼ばれる小型の植物で、マツバボタンに近いスベリヒユ科に属します。冬の間生育し、休眠に入る前の初夏に開花します。普通は白色ですが、この写真のものは桃色をしています。蕾の形がまるでヘビが鎌首をもたげているようでユーモラスです。また、塊根から出る葉は、鱗片状でそれが密生して何本も伸びます。これも成育が遅く、なかなか塊根が大きくならず、この大きさになるまでにいったい何年かかったのか考えるだけでも気が遠くなります。
 下中は、トウダイグサ科の飛竜(Euphorbia stellata)です。ムカデのような茎を出して、小さな花をつけます。これは、比較的丈夫で、大きくなるのも早いほうだと思います。
 下右は、錦珊瑚(Jatropha cathartica)というトウダイグサ科の美しい花を咲かせる植物で、上で紹介してきた植物と違い、メキシコなどのアメリカ大陸原産です。寒さに弱いので、気温を高めにしてやると、次々と茎を伸ばしては花をつけます。
 このような変わった仲間の植物は、成育が遅いものが多く、また、貴重なものが多いので、大切に育てる必要があります。繁殖も難しいものが多く、種子からでないと本来の姿にならないものが少なくありません。寒さに弱いものは温室を用意するなどして、環境を整え、入手したならば、大事に育ててやってください。
蒼角殿(Bowiea volubilis)
うつぼ錦(Anacampseros alstonii (Avonia alstonii))
飛竜(Euphorbia stellata)
錦珊瑚(Jatropha cathartica)

copyright (C) 2004 T. Hoshi
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