下の写真をクリックすると動画が見られます。 (Windows Media Player 9用、サイズ700kB、25秒) |
二枚貝状をした葉(捕虫葉)の両縁には、まるでまつげのように、刺が生えています。刺と言っても痛いほど硬くはありません。これは、虫が捕らえられたときに葉の隙間から逃亡するのを防ぐ役割をしています。また、白い矢印のように大体3本の毛が、捕虫葉の中央部に三角形の形で生えています。これを感覚毛といいます。この感覚毛に二回以上触れると、すばやく葉を閉じます(このリンクをクリックすると動画が見られます。Windows Media Player 9用、サイズ700kB、25秒)。2回の刺激の間隔が35秒以内でなければなりません。Brown氏の1916年の論文によると、1.5分では4回、2分では6回、10分では13回前後の刺激を与える必要があります。これは、記憶力は悪いが、ハエジゴクにも、何らかの刺激記憶メカニズムがあることを示していて、大変興味深いですが、その記憶機構については現在もほとんど解明されていません。刺激は、捕虫葉の中で、電気によって伝えられ、細胞の水の移動によって閉じることは調べられています。また、もう一度開くときには、葉の生長運動によって開きます。閉じるのは早いのですが、開くのには約2日ぐらいかかり、しかも葉の大きさが少し大きくなります。一枚の葉は、2-3回しか、捕虫することが出来ません。あまり刺激を与えすぎると、もう、葉を閉じる速度がだんだん鈍くなって、やがて動作しなくなってしまいます。何度も刺激しすぎると、肝心の虫がやってきた時に捕虫できないということにもなりますので、いたずらは程々にするのが肝心です。
虫が捕まると、消化に約1週間から10日ほどかかり、消化が終わると、また葉を開いて、消化できなかった殻などを風で飛ばし、また、虫を待ちます。そして、ただ閉じるのではなく、虫が捕まると、今度は30分から1時間くらいかかって虫を押しつぶすような運動を行い、それから消化液を分泌します。3日目から4日目くらいになって、閉じた葉を指で開いてみると、虫が消化液に満たされていることが観察できます。
日本では、梅雨どきに、花を咲かせます。5弁の梅のような花です。やがて種子が実ります。種子は、松葉ぼたんの種のように小さくて黒光りをしています。実った種をすぐにまくと、子葉が出てから、本葉が出ます。本葉には、すでにとても小さな捕虫葉がついています。アブラムシ(アリマキ)位は捕まえられそうです。約半年経つと、上右の写真のようになります。小さいときには、休眠させなくても大丈夫なので、温室で冬も育てつづけると約1年半で下の1.5年の写真のようになります。最初の成長は遅いのですが、種をまいてから約3年で親株になり、花を咲かせ始めます。
寒くなってくると、葉の大きさは小さくなり、また、動きも鈍くなります。やがて、葉は黒く枯れて、葉柄の部分が肥大した鱗茎のような形で冬越しします。少し位凍ってもまったく問題はありません。下の写真は、冬の状態です。この頃に植え替えをするのが栽培のコツです。
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これと似た、虫の捕らえ方をする水草もあります。ムジナモ(Ardrovanda vesiculosa アルドロバンダ・ベシキュローサ)です。これは、以前、日本にも自生していましたが絶滅しました。しかし、趣味家によって栽培されていたものが自生地に戻され、回復の試みがされています。この植物は、捕虫葉の大きさは、数mmで小さいのですが、ハエジゴクよりも、かなり早く0.1秒以下で閉じます。ここををクリックすると捕虫葉の運動の動画が見られます(MPEG、3.07MB、11秒)。水の中で水の抵抗があるのに、脅威の速度です。こちらは、栽培が少々難しく、また、ハエジゴクほど派手さがないので、栽培している人は少ないです。入手するのには、ハエジゴクと比べて、少し努力が必要でしょう。 皆さんも、このように面白い植物を育てて、植物の神秘を身近で観察しましょう。ハエジゴクは比較的大きな園芸店で一鉢500円から800円程度で市販されていて簡単に手に入れられます。出来れば、3鉢ぐらい買って、最初に説明したような大きな鉢に、植え替え時期を外しているので、根を傷つけないように慎重にそっと寄せ植えしてやります。そうすると、思いのほか簡単に栽培できるでしょう。 |