変わった形の葉


 様々な機能や形を持った植物の葉があります。ここでは、普通見慣れている葉とは一風違った葉を持つ植物をいくつか紹介します。
コノフィツム・ブルゲリー(Conophytum burgeri) ハウオルチア・オブツーサ(Haworthia obtusa) ハウオルチア・コレクタ(Haworthia correcta)
万象(Haworthia maughanii)  最初に紹介するのは、窓植物と呼ばれる仲間です。葉に半透明の窓があり、そこから太陽の光を取り入れるようになっている植物です。このような植物は、乾燥地帯に多く、土の中にほとんど体をうずめて、頭だけを地表に出して、そこに天窓を開けて、葉の内部で光合成しているのです。土の中は、地上よりも環境が安定しているし、動物にも食べられにくい場所です。強い光を窓に取り入れて、それを弱めたり、拡散させたりして、葉の内部で効率的に光合成するわけです。上の左は、ちょっと見たのでは植物とは思えないと思います。コノフィツム・ブルゲリー(Conophytum burgeri)といい、南アフリカ原産のツルナ科の植物です。一つの直径は1.5から2cm位で、3株の植物があります。写真では花を咲かせていませんが、秋にピンク色の花が中心を割って咲きます。植物体は半透明に透き通っており、中に光が入ります。また、休眠に入る春には、真っ赤な色になり、そのあと、かさぶた状の皮をかぶって秋まで休眠します。上中は、ハウオルチア・オブツーサ(Haworthia obtusa)というユリ科の植物で、葉の先端が透き通っており、光にかざすととても美しい眺めになります。同じハウオルチアの仲間に、ハウオルチア・コレクタ(Haworthia correcta)があります。右上のように、ヒドテ型の植物体の葉の表面に窓があります。窓には、古い陶器の釉薬にはいるようなひびの模様があり、それか、一株一株微妙に異なって、見飽きません。右横は、やはり、ハウオルチアの仲間で、マンゾウ、万象(Haworthia maughanii)といいます。まるで、動物のゾウの足をひっくり返したような変わった形の葉の表面に窓があり、放射線状に模様が入ります。これらの模様がなぜ入るのかは分かりませんが、人間の注意をひきつけるらしく、この模様の違いに魅せられて、集め始めて病み付きになってしまう人もいるようです。ハウオルチア属の植物は、南アフリカのケープ州を中心に原産します。自然の状態では、表面だけを地表に出しており、植物体全体を地表に出す、このような園芸的な栽培方法は、植物にとってはかなり異常な状態なのかもしれません。そのせいか分かりませんが、直射日光を当てずに日陰で涼しく栽培したほうがきれいに育ちます。この他にも、目立つ窓のある、ツルナ科のオフタルモフィルム(Ophthalmophyllum)属の植物が窓植物としては有名です(下左の写真は、オフタルモフィルムの秀鈴玉(シュウレイギョク(Ophthalmophyllum schlechiteri))です)。
シュウレイギョク(Ophthalmophyllum schlechiteri) コノフィツム・ブルゲリー(Conophytum burgeri) コノフィツム・ブルゲリー(Conophytum burgeri)
ベゴニア・マイマイ(Begonia cv. 'Escargot') アルブカ・ナマクエンシス(Albuca namaquensis) ラセンイ(Juncus decipiens var.spiralis)
 生長が不均一になると曲がり始め、それがさらに進むと、ぐるぐると渦を巻くようになります。上左の写真は、ベゴニアのレックス系品種のマイマイ(Begonia cv. 'Escargot')です。ベゴニアの葉は、左右不対称で、それが極端になると、葉がうずを巻く品種が沢山あります。この品種は、本当に名前の通りカタツムリの殻のようにうずを巻いています。一面に生えていたら、それこそ、目が回ってしまいそうですね。上中は、アフリカ産のユリ科の球根(鱗茎)植物、アルブカ・ナマクエンシス(Albuca namaquensis)です。この仲間は、細い葉を出し、可愛い花を咲かせます。ゼンマイのようにらせん状に巻く葉をもつ種類もいくつかあります。この他にも、アヤメ科の球根のモレア(Moraea sp.)にも、葉の巻くものがあります。日本でも古くから栽培されているイグサ科の仲間にラセンイ(Juncus decipiens var.spiralis)があります。これも、くるくると葉が巻く植物です。ラセンイは、湿地帯の植物ですので、乾燥させないように栽培することが重要です。
オオガタリョクトウ(Crassula pyramidalis) タマツバキ(Crassula teres) タマツバキ(Crassula teres)
 ベンケイソウ科の植物の仲間には、葉を過密に重ね合わせた塔状の種類があります。大型緑塔(オオガタリョクトウ(Crassula pyramidalis))は、高さ5cm程度の小さな植物です。その形態は、左上の写真のようにね本当に緑色の塔のようです。乾燥地帯の植物なので、葉を密に重ね合わせることによって、表面積を減らし、蒸散を小さくしているのかもしれません。高温多湿に弱いので、夏は水を減らして休眠させてやることが大切です。似たものをもうひとつあげると、中と右上の写真で示した玉椿(タマツバキ(Crassula teres))です。これは、葉が鱗片状にびっしりと重なってつき、地上に球根(鱗茎)があるようです。草丈は、やはり7〜8cm程度です。まさにヤブツバキの花芽のようですね。冬に小さな白い花を咲かせます。ジャスミンのようなとてもよい香りがして、咲いていることがすぐにわかります。いずれも、南アフリカ大陸原産の多肉植物の仲間です。
ミドリノスズ(Senecio rowleyanus) マサイノヤジリ(Senecio kleiniiformis) ミドリノタイコ(Xerosicyos danganyii)
 左上は、日本でもよく普及しているグリーンネックレス、または、緑の鈴(ミドリノスズ(Senecio rowleyanus))です。キク科の植物であることは、写真の花を見るとわかりますね。この植物は、葉が肥大して球状になり、茎が匍匐して、そこから根を出しながら育っていきます。この性質を利用して、吊り鉢などに仕立てられています。上中の植物も、緑の鈴と同じセネキオ属のマサイの矢尻(マサイノヤジリ(Senecio kleiniiformis))です。本当に矢尻のような形の葉です。色も、青白色で美しい植物です。セネキオ属の植物には、冬から春の鉢花としてよく知られている、シネラリア(サイネリア)など、いろいろな形態・性質の植物が含まれます。夏に暑がるものが多いので、夏を涼しく・爽やかに過ごさせるのが栽培のコツです。左は、ウリ科の緑の太鼓(ミドリノタイコ(Xerosicyos danganyii))です。肉厚でまん丸の葉をたくさん出します。緑色をした団扇太鼓のようです。長く伸びると巻きひげを出します。多肉植物の中には、このような変わった形の葉を持つ植物が数多くあります。乾燥地帯という厳しい環境が、多様な葉を持った植物を進化させたのでしょうか。
アカバヒコウキソウ(Christia vespertilionis) ストライプヒコウキソウ(Christia vespertilionis) アメリカネム(Samanea saman)
  多肉植物以外で、変わった葉の植物を探して見ましょう。左上は、飛行機草(ヒコウキソウ(Christia vespertilionis))という中国南部原産のマメ科の植物です。幼植物のうちは単葉ですが、やがて写真のような三出複葉になり、その葉が風でヒラヒラとゆれて飛行機が飛んでいるように見えます。どうしてこのような形の葉になったのか理由はわかりません。寒さにやや弱いので、冬は室内で保護するか、種を取って春まき1年草として栽培します。葉の赤いアカバヒコウキソウと縞模様のストライプヒコウキソウが日本でよく栽培されます。中上の写真は、アメリカネム(Samanea saman)という、やはりマメ科の高木です。アメリカネムというより、某電気会社の♪このー木何の木・・・というCMで登場する木と言ったほうがわかりやすいかもしれません。大きくなると、傘を広げたような独特の樹形になります。この植物の葉の面白いところは、葉を本当に丁寧に折りたたんで眠ることです。オジギソウやネムノキなど、夜になると葉をたたむ植物は数多くありますが、この植物は、写真の上の葉のように葉柄も折れ曲がり、本当にコンパクトに葉を畳みます。まるで、最新式の超小型折り畳み傘のようです。夕方だけでなく、雨が近づいて暗くなると、すぐに葉を畳むので、雨を予知できる木とも呼ばれています。
ツルビロードサンシチ(Gynura aurantiaca cv.'Purple Passion') コンテリクラマゴケ(Selaginella uncinata) ホンコンシュスラン(Ludisia discolor)
 葉の表面構造が変わっている植物を紹介します。左上の写真は、ツルビロードサンシチ(Gynura aurantiaca cv.'Purple Passion')というジャワ原産の種を改良したキク科の半ツル性の植物です。葉の表面に赤紫の毛が密生していて、本当にビロードのような風合いです。吊鉢や行灯仕立てで鑑賞に値する大変美しい葉を持つ植物です。黄色いキク科特有の頭花を咲かせます。このギヌラの仲間には、水前寺菜、別名、金時草(キンジソウ)(Gynura bicolor)という野菜があります。加賀の野菜として作られています。芽先をお浸しにしてポン酢や醤油で食べると、香りが高く美味です。上中の写真は、コンテリクラマゴケ(Selaginella uncinata)というイワヒバに近い仲間です。この葉は、ちょっとほかの植物の葉には無い独特の色を持っています。また、葉の表面に何らかの構造があるようで、見る角度によって、青から緑に色を変化させます。「紺照鞍馬苔」という和名の漢字表記からもそれがわかります。外国ではレインボーファーンとも呼ばれています。このほかには、ラン科の植物に、宝石ラン(ジュエル・オーキッド)と呼ばれる、大変美しい葉を持った植物があります。その中で大変ポピュラーなものが、上右の写真のホンコンシュスラン(Ludisia discolor)で、独特の表面構造があるためか、ビロードがかった葉にきらめくような金色の線が走り、高級な布地を見るような美しさです。また、左下が、宝石ランの仲間のドッシニア(Dossinia marmorata)、下中がナンバンカモメラン(Macodes petota)です。どれも美しい金の線が入り、これだけを収集しているランの愛好家もいるようです。モルフォ蝶の仲間に美しい青色をした熱帯蝶(メネラウスモルフォ)などがいます。この青い色は構造色といって単なる色素による化学的発色ではなく、微細構造での光の回折による物理的な性質で得られるのだそうです。布地に応用する研究が進められているそうです。植物の葉や花弁にもこのような構造があるのではないでしょうか。サボテンの花弁の金属光沢など、まさにダイヤモンドの輝きです。
ドッシニア(Dossinia marmorata) ナンバンカモメラン(Macodes petota) ゴーラム(Crassula portulacea f.monstrosa cv. 'hobbit' or 'Gollum')
 また、多肉植物に戻ります。上右の写真は、ベンケイソウ科のクラッスラのなかから改良されたゴーラム(Crassula portulacea f.monstrosa cv. 'hobbit' or 'Gollum')と呼ばれる品種です。これと極めて類似したものにホービットと呼ばれるものもあり、私の見た感じでは同一のものではないかと思います。とても変わった円筒状で頭部が陥没した多肉の光沢ある葉をたくさんつけます。寒くなると葉先から紅葉して美しいです。どうして、このような形状の葉になったのか、大変興味深いと思います。
フタツバカナボウノキ(Alluaudia procera) リトプス(上から時計回り紅大内玉(Lithops optica cv.rubra)、朱唇玉(Lithops karasmontana)、オリーブ玉(Lithops olivaceae)) ドトウ(Faucaria tuberculosa)
 こんどは、マダガスカル島原産の変わった植物、二つ葉金棒の木(フタツバカナボウノキ(Alluaudia procera))の木です。原産地では、大木になるので建築材としても使われています。ディディレア科の植物です。とげの下に芽があり、枝が伸びた年には1枚ずつの葉を出します。それか、乾季に落葉して、次の年には2枚ずつ出ます。この植物の面白いところは、普通、葉は、太陽の光線を受けるために水平に開きますが、これは垂直に葉を出します。強い直射日光を避けるためともいわれていますが、なぜ、そのような葉の出方をするのか良くわかりません。中上は、南アフリカ原産のツルナ科のリトープス(上から時計回り紅大内玉(Lithops optica cv.rubra)、朱唇玉(Lithops karasmontana)、オリーブ玉(Lithops olivaceae))といわれる。2枚の葉に相当する部分が肥大して、さまざまな色になります。動物の食害を避けるため、原産地の土壌に似たと記載をしているといわれている、擬態植物です。さらに詳しくは、「石になった植物」を参照してみてください。右上は、やはりツルナ科の怒涛(ドトウ(Faucaria tuberculosa))と呼ばれる植物です。波涛のようないぼいぼの変わった葉をつけて、どこが茎で芽なのかわからないような植物です。こんな葉を眺めていると、いったいどんな環境が、この植物にこんな進化を遂げさせたのか興味が尽きません。
シカイナミ(Faucaria tigrina) ハエジゴク(Dionaea muscipula) ヒョウタンウツボカズラ(Nepenthes alata)
 左上の写真は、上の怒涛と同じ仲間の四海波(シカイナミ(Faucaria tigrina))です。こちらは、サメの歯のような恐ろしげな形の葉をつけます。これも、どうしてこんな形になったのでしょうか。この形にちょっと似ている感じがするのが、北アメリカ原産のモウセンゴケ科のハエジゴク(ハエトリソウ(Dionaea muscipula))です。詳しくは、「能動的に捕まえる」を参照ください。虫を捕らえるために、0.5秒ぐらいの高速で葉を閉じます。葉のふちには逃亡防止のために歯がついています。しかし、これに類似の植物は、小型の水草であるムジナモを除いて、見つかっていません。ハエジゴクは、どんな植物からどのように進化してきたのか、なぜ、進化の袋小路に入ってしまったのか、あるいは、今も進化し続けているか、興味は尽きないところです。食虫植物といえば、不思議な形をした補虫袋をつけるウツボカズラ(ヒョウタンウツボカズラ(Nepenthes alata))も上げねばなりません。これについては、「落ちるのを待つ」を参照してください。
トビバクロトン(Codiaeum variegatum var. pictum 'Interruptum') オモト・シマジシ(Rohdea japonica cv. 'Shima-jishi') キッコウダコ(Alocasia cuprea)
オルトフィツム・グルケニイ(Orthophytum gurkenii)  左上の写真は、トウダイグサ科の観葉植物のトビバクロトン(Codiaeum variegatum var. pictum 'Interruptum')で、写真を見てもわかるように、葉身が途中で中肋を残して途切れます。上中は、オモト・シマジシ(Rohdea japonica cv. 'Shima-jishi')で、縞斑の入った葉が渦巻状に巻いて伸びていきます。とても観賞価値の高い植物です。オモトについては、「江戸時代の奇妙な園芸植物」も参照してみてください。上左は、形は変わっていないのですが、メタリックな輝きがとても変わっていて、かつ、鑑賞価値の高い、サトイモ科のキッコウダコ(Alocasia cuprea)です。能の翁のお面のような、人間の肋骨のような、ちょっと不気味ですが目を引く葉を持つ植物です。左は、パイナップル科のオルトフィツム・グルケニイ(Orthophytum gurkenii)で、縞状に細かい毛(トリコーム)が葉面に生えて模様を作り、じっと眺めていると目がチカチカして模様が動いているように見えます。

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